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症状から薬を知る
悪夢・悪夢障害に使われる薬・漢方薬
怖い夢を繰り返す原因・治療・対処法を解説

怖い夢を繰り返し見る、夢の途中で目が覚める、 また悪夢を見るのが怖くて眠れない――。 このような睡眠の悩みが続いている場合、 悪夢障害(あくむしょうがい)が関係している可能性があります。
悪夢は誰にでも起こり得るもので、 一度怖い夢を見たからといって病気というわけではありません。 しかし、悪夢を繰り返すことで睡眠が妨げられ、 日中の生活にも支障が生じる場合には、治療の対象になることがあります。
悪夢には、ストレス、睡眠不足、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、 使用中の医薬品など、さまざまな要因が関係することがあります。
治療では、睡眠習慣の改善に加えて、 イメージリハーサル療法などの心理療法が重要な選択肢になります。 また、不眠や不安などの症状に応じて医薬品や漢方薬が検討されることもあります。
このページでは、悪夢と悪夢障害の違い、原因・診断・治療、 子どもの悪夢への対応、夜驚症との違い、 酸棗仁湯・帰脾湯・温胆湯などの漢方薬の位置づけ、 市販薬の通販や処方箋なしでの購入方法まで、薬剤師が分かりやすく解説します。
このページで分かること
- 悪夢と悪夢障害の違い
- 怖い夢を繰り返し見る原因
- 悪夢とストレス・PTSD・医薬品との関係
- 悪夢・夜驚症・レム睡眠行動障害の違い
- 子どもが悪夢を見たときの対応方法
- 悪夢障害の診断と標準的な治療
- イメージリハーサル療法とは何か
- 悪夢に関連して使用される西洋薬
- 不眠・不安などに使われる漢方薬の特徴
- 市販薬・通販・処方箋なしでの購入方法
- 医療機関へ相談した方がよい状態
悪夢とは?悪夢障害との違い
悪夢とは、強い恐怖や不安、不快感などを伴う夢のことです。 追いかけられる、危険な目に遭う、大切な人を失うなど、 夢の内容は人によって異なります。
悪夢では、夢の途中で目が覚めたり、 起きた後にも夢の内容を鮮明に覚えていたりすることがあります。
悪夢障害とは?
悪夢障害は、強い不安や恐怖などを伴う悪夢が繰り返し起こり、 そのために睡眠や日常生活に明らかな支障が生じる状態です。
例えば、次のような場合には悪夢障害が考えられます。
- 怖い夢を繰り返し見る
- 悪夢によって夜中に何度も目が覚める
- 起きた後も恐怖や不安が残る
- 悪夢を見ることが怖くて寝るのを避ける
- 眠りが浅くなり、日中に強い眠気や疲労を感じる
- 仕事、学校、家庭生活などに支障が出ている
悪夢を見ること自体は珍しくありません
悪夢は健康な人にもみられます。 一度や数回怖い夢を見たというだけで、悪夢障害とは診断されません。
重要なのは、悪夢の頻度だけでなく、 睡眠が妨げられているか、眠ることへの不安が強いか、 日中の生活にどの程度影響しているかという点です。
悪夢はなぜ起こる?主な原因・きっかけ
悪夢の原因は一つではなく、 睡眠の状態、心理的な負担、病気、使用中の医薬品などが関係することがあります。
ストレス・不安
仕事や学校、人間関係などの不安や緊張が、 夢の内容や睡眠に影響する場合があります。
睡眠不足・生活リズム
不規則な睡眠や睡眠不足が続くと、 夢が鮮明になったり、悪夢を経験しやすくなったりすることがあります。
PTSD・トラウマ
強い恐怖を伴う体験の後に、 その出来事に関連する悪夢を繰り返すことがあります。
うつ病・不安症など
精神的な不調と悪夢が同時にみられることがあり、 背景にある状態への対応が必要になる場合があります。
医薬品の影響
一部の抗うつ薬やβ遮断薬などが、 夢の鮮明さや悪夢に関係する場合があります。
飲酒・睡眠に関係する病気
アルコールの影響や離脱、睡眠時無呼吸などが 睡眠の質や夜間の覚醒に関係することがあります。
悪夢を見た原因が必ず見つかるとは限りません
明らかなストレスや病気がなくても悪夢を見ることはあります。 また、夢の内容だけから心理状態や特定の病気を診断することはできません。
そのため、悪夢が続く場合には、 最近の生活の変化、睡眠時間、日中の体調、 使用中の医薬品などを総合して確認します。
悪夢はレム睡眠と関係している?
私たちの睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠があります。
レム睡眠は、夢を鮮明に体験することが多い睡眠段階です。 悪夢障害の悪夢は、主にこのレム睡眠に関連して起こると考えられています。
レム睡眠は夜の後半に長くなるため、 悪夢は明け方など、睡眠の後半に起こりやすいという特徴があります。
ただし、すべての夢や悪夢がレム睡眠だけで起こるわけではなく、 発生時刻だけで悪夢障害を診断することはできません。
悪夢・夜驚症・レム睡眠行動障害の違い
夜中に怖がる、叫ぶ、身体を動かすといった症状があっても、 その背景には異なる睡眠の問題がある場合があります。
| 状態 | 主な特徴 | 夢の記憶 |
|---|---|---|
| 悪夢・悪夢障害 | 怖い夢を見て目覚める。夜の後半に多い | 鮮明に覚えていることが多い |
| 夜驚症 | 深い睡眠中に突然叫ぶ。呼びかけに反応しにくい | 覚えていないことが多い |
| レム睡眠行動障害 | 夢に合わせて叫ぶ、殴る、蹴るなどの動きが出る | 起きると夢を覚えていることがある |
| 一般的な夜泣き | 乳幼児が夜中に目を覚まして泣く | 年齢によって異なる |
怖い夢で目が覚め、夢の内容を鮮明に覚えていることが多い状態です。
深い睡眠から不完全に目覚め、突然叫んだり興奮したりする状態です。翌朝は覚えていないことが多くあります。
夢に合わせて身体が動き、本人や周囲の人がけがをすることもある睡眠障害です。
乳幼児が夜中に泣く状態で、睡眠の発達や身体の不快感など、さまざまな原因があります。
特に成人になってから、睡眠中に大きな寝言を言う、 殴る・蹴るなどの行動が現れる場合には、 レム睡眠行動障害などの可能性もあるため、医療機関での確認が大切です。
子どもが悪夢を見るのは普通?
悪夢は子どもにもよくみられます。 特に幼児期から学童期にかけて、 怖い夢を見て夜中に目が覚めることがあります。
子どもは成長とともに想像力が豊かになり、 日中に経験した出来事や不安などが夢に現れる場合があります。
多くは成長とともに落ち着きますが、 悪夢を頻繁に繰り返したり、眠ることを強く怖がったりする場合には、 小児科などで相談することも大切です。
子どもが怖い夢で目を覚ましたときの対応
目覚めて怖がっている場合は、落ち着いた声で安心させます。
お子さんが話したい場合は聞きますが、怖い夢の内容を無理に説明させる必要はありません。
静かな環境を保ち、必要に応じて保護者がそばで見守ります。
睡眠不足や強い刺激、不安を感じる出来事などがないか確認します。
悪夢で目覚めた子どもは、保護者の声かけに反応し、 夢の内容を話せる場合があります。 一方、夜驚症では本人が十分に目覚めていないことが多く、 無理に起こさず安全を確保することが基本になります。
悪夢障害はどのように診断する?
悪夢障害は、悪夢の内容や頻度、 睡眠への影響、日中の生活への支障などを確認して診断します。
通常は、本人や家族からの聞き取りが重要であり、 すべての方に睡眠検査が必要になるわけではありません。
診察で確認されること
- 悪夢がどのくらいの頻度で起こるか
- いつごろから悪夢が続いているか
- 夢で目が覚めた後に内容を覚えているか
- 睡眠や日中の生活にどの程度影響しているか
- ストレスや強い恐怖を伴う体験があったか
- 使用中の医薬品や飲酒習慣など
- 睡眠中の身体の動きやいびき・無呼吸の有無
レム睡眠行動障害や睡眠時無呼吸などが疑われる場合には、 睡眠ポリグラフ検査などが検討されることもあります。
悪夢障害の治療では何をする?
悪夢障害の治療では、背景にある原因や睡眠習慣を確認し、 心理療法などを組み合わせて対応します。
悪夢をなくすために必ず睡眠薬を使用するわけではありません。
PTSD、うつ病、不安症、睡眠障害、薬の影響など、 背景にある問題を確認します。
睡眠不足を避け、就寝・起床時刻を整え、 安心して眠れる環境を作ります。
悪夢の内容を怖くない展開に書き換え、 起きている間にその新しいイメージを練習する心理療法などが用いられます。
併存する病気がある場合には、 その状態に応じた心理療法や医薬品による治療を行います。
悪夢の頻度、睡眠の質、日中の疲労や不安などを確認し、 治療方法を調整します。
イメージリハーサル療法(IRT)とは?
イメージリハーサル療法は、 悪夢障害に対して用いられる心理療法の一つです。
英語ではImagery Rehearsal Therapy(IRT)と呼ばれ、 米国睡眠医学会(AASM)の2018年のポジションペーパーでは、 成人の悪夢障害に対して推奨されている治療法です。
悪夢の内容を怖くない展開に書き換える
IRTでは、繰り返す悪夢の内容を、 安心できる展開や怖くない結末に書き換え、 起きている間に新しい夢のイメージを練習します。
繰り返している夢の内容や、どのような不安が生じているかを確認します。
怖い出来事が別の方向に進むなど、安心できる内容に組み替えます。
新しく作った夢の内容を繰り返し思い浮かべることで、悪夢への反応を変えることを目指します。
特にPTSDなど、強い恐怖を伴う過去の体験と悪夢が結びついている場合には、 無理に詳しい内容を思い出そうとせず、 心理療法を行う専門家と相談しながら進めることが大切です。
なお、PTSDに関連する悪夢については、ガイドラインによって IRTに関する推奨の評価に違いがあります。 治療方法は患者さんの状態や希望を踏まえて選択されます。
悪夢に使われる西洋薬はある?
悪夢障害の治療では心理療法などが重要ですが、 PTSDに関連する悪夢や、併存する不眠・精神疾患などに対して 薬が使用される場合もあります。
ただし、「悪夢に使用されることがある薬」と 「日本で悪夢障害が正式な効能・効果として承認されている薬」は区別する必要があります。
| 薬・成分 | 悪夢との関係 | 日本での位置づけ |
|---|---|---|
| プラゾシン | PTSDに伴う悪夢への使用が海外ガイドラインで検討される | 悪夢障害を承認効能とする薬ではない |
| 抗うつ薬など | うつ病・PTSDなどの治療に使用される | 薬ごとの承認効能に基づいて使用 |
| 睡眠薬 | 併存する不眠症などに使用される場合がある | 悪夢そのものの治療とは区別 |
| 市販の睡眠改善薬 | 一時的な寝つきの悪さなどを対象とする製品がある | 悪夢障害の治療薬ではない |
PTSDに伴う悪夢について、海外の治療指針で使用が検討されています。
日本では悪夢障害の承認効能なしうつ病やPTSDなど、背景にある病気の治療に用いられます。
不眠症などが併存している場合に使用されることがあります。
悪夢障害の改善を目的とする承認効能はありません。
悪夢障害の治療薬ではないPTSDに伴う悪夢で研究・使用される薬
プラゾシンは悪夢に使われる?
プラゾシンは、交感神経の働きに関係する α1受容体を遮断する医薬品です。
海外では、PTSDに伴う悪夢に対する治療薬として研究されてきました。 米国退役軍人省・国防総省(VA/DoD)の2023年の診療ガイドラインでは、 PTSDに伴う悪夢に対するプラゾシンの使用が条件付きで提案されています。
一方、研究結果には一貫しない部分もあり、 すべての患者で効果が認められているわけではありません。
日本の承認適応とは区別が必要です
プラゾシンは、日本で悪夢障害そのものを効能・効果として 承認された医薬品ではありません。
海外のPTSD治療で使用されていることと、 日本で一般の悪夢に対して使用できる市販薬であることは異なります。
低血圧、めまい、起立性低血圧などにも注意が必要であり、 使用の必要性は医師が判断します。
睡眠薬や抗うつ薬は悪夢を改善する?
不眠症やうつ病、PTSDなどがある場合には、 それぞれの状態に対して睡眠薬や抗うつ薬などが使用されることがあります。
しかし、睡眠薬で眠れるようになることと、 悪夢そのものが改善することは同じではありません。
また、一部の医薬品では副作用として夢が鮮明になったり、 悪夢が増えたりする可能性もあります。
薬を飲み始めてから悪夢が増えた場合
新しい薬の使用開始や増量後に悪夢が増えた場合には、 医薬品との関連について医師・薬剤師に相談してください。
ただし、自己判断で処方薬を急に中止すると、 元の病気が悪化したり、離脱症状が起こったりする場合があります。 服薬変更は医師と相談して行うことが大切です。
悪夢に漢方薬は使われる?
漢方医学では、悪夢という症状だけで一つの処方を決めるのではなく、 不眠、精神不安、緊張、イライラ、疲労、 胃腸の弱さ、動悸などを総合して考えます。
例えば、怖い夢を繰り返して眠りが浅く、 さらに強い疲労感や精神不安がある場合には、 睡眠と精神状態の両方を目標として漢方薬が検討されることがあります。
漢方薬の位置づけについて
酸棗仁湯、帰脾湯、温胆湯、抑肝散加陳皮半夏などには、 不眠症、神経症、精神不安などに用いられる製剤があります。
ただし、これらは「悪夢障害そのもの」への治療効果が 確立した医薬品として紹介しているわけではありません。
悪夢に伴う不眠や不安などの症状・体質から考える選択肢として整理しています。
疲労・眠りの浅さ・不眠
酸棗仁湯
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
酸棗仁湯は、心身が疲れているのに眠れない、 眠りが浅い、夜中に目が覚めるなどの状態に用いられる漢方薬です。
漢方では、心身の消耗によって精神を落ち着かせる働きが弱まり、 十分に休めなくなっているような状態を考えます。
酸棗仁(さんそうにん)を中心に、 茯苓(ぶくりょう)、知母(ちも)、 川芎(せんきゅう)、甘草(かんぞう)を組み合わせた処方です。
疲れているのに眠りが浅く、悪夢で目が覚めることもある場合には、 眠りの状態や精神不安などを確認しながら検討されます。
疲労感があり、寝つきが悪い、眠りが浅い、 途中で目が覚めるといった不眠症状を目標にする処方です。 悪夢そのものを直接抑える薬という意味ではありません。
疲労・不安・眠りの浅さ
帰脾湯
帰脾湯(きひとう)
帰脾湯は、心身の疲れに加えて、 精神不安、不眠、食欲低下、貧血傾向などがある状態に用いられる漢方薬です。
漢方では、胃腸の働きが弱り、身体を支えるエネルギーや 「血(けつ)」が不足しているような状態を考えます。
ここでいう血虚(けっきょ)は、 漢方でいう血が不足し、疲れやすさ、めまい、 不眠などが現れやすい状態を指します。
不安や心配ごとが多く、眠りが浅い、 夢をよく見る、疲れやすい、食欲も低下しているといった場合には、 帰脾湯が検討されることがあります。
帰脾湯と酸棗仁湯の違い
どちらも不眠を伴う状態に用いられますが、 酸棗仁湯は心身の疲れと眠りの問題を中心に考える処方です。
帰脾湯では、これに加えて、 精神不安、胃腸の弱さ、食欲低下、血色の悪さなども 重要な選択の手がかりになります。
悪夢で眠りが浅いことに加え、 疲労、不安、食欲低下などがみられる場合に、 関連する不眠や精神状態を目標として考える処方です。
不安・緊張・胃腸の弱さ
温胆湯
温胆湯(うんたんとう)
温胆湯は、胃腸が弱く、不安や緊張があり、 なかなか眠れない状態などに用いられる漢方薬です。
漢方では、胃腸の働きが低下して、 余分な水分や代謝物が身体に停滞し、 精神の落ち着きにも影響しているような状態を考えます。
不安や緊張で考えごとが続き、寝つきが悪い、 ちょっとしたことに驚きやすい、 胃の不快感を伴うといった場合に検討されます。
温胆湯エキス細粒G「コタロー」の承認効能は、 胃腸衰弱者の不眠・神経症です。
不安や緊張に加え、 胃腸の弱さや不眠がみられる場合に用いられる処方です。 悪夢障害そのものを治療する承認効能ではありません。
神経の高ぶり・イライラ・不眠
抑肝散加陳皮半夏
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
抑肝散加陳皮半夏は、 神経が高ぶり、イライラする、怒りっぽい、 興奮しやすいといった状態に用いられる漢方薬です。
抑肝散に陳皮(ちんぴ)と半夏(はんげ)を加え、 胃腸の働きにも配慮した処方となっています。
ストレスや神経の高ぶりが強く、 眠りにくい、眠りが浅い、夜間に目が覚めるなどの状態で、 関連する不眠や神経症状を目標に検討されます。
イライラ、神経過敏、興奮、不眠などを伴う場合の選択肢です。 悪夢を見たことだけを理由に選択する処方ではありません。
そのほかの症状・体質から検討される漢方薬
悪夢に伴う不安、不眠、動悸、疲労などの症状によっては、 そのほかの漢方薬も検討されます。
加味帰脾湯
かみきひとう
心身の疲れ、精神不安、不眠などに用いられます。 帰脾湯に柴胡・山梔子を加えた処方で、 不安やイライラなどを伴う場合にも検討されます。
桂枝加竜骨牡蛎湯
けいしかりゅうこつぼれいとう
神経過敏で興奮しやすく、疲れやすさや不眠、 動悸などを伴う場合に検討される漢方薬です。
柴胡加竜骨牡蛎湯
さいこかりゅうこつぼれいとう
精神不安やイライラが強く、 不眠、動悸、便秘などを伴う状態に用いられる処方です。
甘麦大棗湯
かんばくたいそうとう
神経過敏、驚きやすさ、興奮しやすさなどの状態に用いられる漢方薬です。 悪夢そのものではなく、関連する精神神経症状から検討します。
悪夢に伴ってみられる不眠や不安、身体症状などを踏まえて、 漢方医学的に考えられる選択肢です。
PTSDに伴う悪夢と漢方薬|神田橋処方とは?
PTSD(心的外傷後ストレス障害)では、 過去の強い恐怖を伴う体験に関連した悪夢や、 フラッシュバック、過度の緊張、不眠などがみられることがあります。
日本の精神科・心療内科領域では、 PTSDに伴うフラッシュバックなどに対して、 神田橋処方(かんだばししょほう)と呼ばれる 漢方の組み合わせが応用されてきました。
神田橋処方は、主に次の2つの漢方処方を組み合わせる考え方です。
- 四物湯(しもつとう)
- 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
これは、通常の一般用医薬品として 「悪夢障害」を効能・効果に持つ一つの製品ではありません。
PTSDやフラッシュバックを対象とした症例報告や臨床経験に基づいて 応用されているものであり、 悪夢障害そのものに対する効果が確立した標準治療ではありません。
PTSDが疑われる場合には、まず適切な診断を受け、 心理療法など必要な治療を優先することが重要です。
神田橋処方の構成や、PTSD・フラッシュバックに対する漢方医学的な考え方は、 別ページで詳しく紹介しています。
神田橋処方・PTSDと漢方薬について詳しく見る悪夢に関連する漢方薬の早見表
悪夢がある場合でも、漢方薬は睡眠の状態や心身の症状によって選択されます。
| 漢方薬 | 主に考える症状・体質 | 悪夢との関係 |
|---|---|---|
| 酸棗仁湯 | 心身の疲れ、眠りの浅さ、不眠 | 関連する不眠症状から検討 |
| 帰脾湯 | 疲労、精神不安、不眠、食欲低下 | 関連する不眠・不安から検討 |
| 温胆湯 | 不安、驚きやすさ、胃腸の弱さ、不眠 | 関連する不眠・神経症から検討 |
| 抑肝散加陳皮半夏 | 神経過敏、イライラ、興奮、不眠 | 関連する神経症・不眠から検討 |
| 加味帰脾湯 | 疲労、精神不安、不眠、イライラ | 関連する不眠・不安から検討 |
| 桂枝加竜骨牡蛎湯 | 神経過敏、疲れやすさ、不眠 | 関連症状・体質から検討 |
| 柴胡加竜骨牡蛎湯 | 精神不安、動悸、不眠、便秘 | 関連症状・体質から検討 |
| 甘麦大棗湯 | 神経過敏、驚きやすさ、興奮 | 関連する精神神経症状から検討 |
| 神田橋処方 | PTSD・フラッシュバックなど | 精神科領域での応用報告あり |
心身が疲れて眠りが浅い、不眠が続く場合に。
疲労、精神不安、食欲低下などを伴う不眠に。
不安や緊張、胃腸の弱さがあり眠れない場合に。
神経が高ぶり、イライラや不眠を伴う場合に。
疲労と精神不安、イライラなどを伴う不眠に。
神経過敏、疲れやすさ、不眠を伴う場合に。
精神不安、動悸、不眠、便秘などを伴う場合に。
神経過敏や驚きやすさ、興奮などを伴う場合に。
PTSDやフラッシュバックに対する漢方の臨床応用。
専門領域での応用報告※表中の漢方薬について、悪夢障害そのものへの有効性が確立していることを示すものではありません。 製品の承認効能と、悪夢に伴う症状・体質からの漢方的な選択を区別しています。
カミツレ薬局で相談・購入できる関連漢方薬
カミツレ薬局では、悪夢に伴う不眠や精神不安、 神経の高ぶりなどに関連する漢方薬を取り扱っています。
以下の商品は、悪夢障害そのものを効能・効果に持つ医薬品ではなく、 不眠症、神経症、精神不安などの症状に応じて使用される漢方薬です。

酸棗仁湯エキス細粒G「コタロー」
さんそうにんとう
心身の疲れ、精神不安、不眠などがある方の不眠症・神経症に。 眠りが浅く、夜間に目が覚めるなどの症状を確認して使用します。
商品情報・購入ページを見る


医療用漢方薬は店舗で処方箋なしで購入できる場合があります
カミツレ薬局では、処方箋医薬品以外の医療用医薬品について、 薬剤師による対面確認後、処方箋なしで購入できる場合があります。
ツムラ酸棗仁湯エキス顆粒(医療用)
心身が疲れ弱って眠れない状態に用いられる医療用漢方製剤です。 悪夢に伴う不眠などがある場合でも、 睡眠の状態や体質を確認して使用の適否を判断します。
カミツレ薬局では店舗取扱ページを設けています。 薬剤師による対面確認後、処方箋なしで購入できる場合があります。
医療用医薬品の通販・郵送販売は行っていません。
店舗での取扱情報を見るツムラ帰脾湯エキス顆粒(医療用)
心身が弱り、血色が悪い方の貧血・不眠症などに用いられる医療用漢方製剤です。
精神不安や疲労感を伴う眠りの問題について、 お身体の状態を確認しながら使用の適否を判断します。
医療用医薬品のため、通販・郵送販売は行っていません。
店舗での取扱情報を見るツムラ加味帰脾湯エキス顆粒(医療用)
精神不安や神経症、不眠症などを伴う場合に使用される医療用漢方製剤です。
帰脾湯と比較して、精神的な緊張やイライラなども考慮しながら選択されます。
悪夢そのものへの効果が確立した製剤ではありません。 医療用医薬品の通販・郵送販売は行っていません。
店舗での取扱情報を見る※医療用医薬品は、ご本人への対面確認が必要です。 症状・既往歴・併用薬・受診状況によっては販売できない場合があります。 在庫状況についても来局前にお問い合わせください。
悪夢の薬は市販・通販・処方箋なしで購入できる?
悪夢障害そのものの治療と、 悪夢に伴う不眠や精神不安などに対する医薬品の使用は、 区別して考えることが必要です。
一般用漢方薬
酸棗仁湯、帰脾湯、温胆湯などの一般用製剤は、 不眠症や神経症などの承認効能に応じて、 薬剤師等による確認後、通販で購入できる場合があります。
医療用漢方薬
カミツレ薬局で取り扱う処方箋医薬品以外の医療用漢方薬は、 薬剤師による対面確認後、 処方箋なしで購入できる場合があります。 通販・郵送販売は行っていません。
医療機関での治療薬
PTSDやうつ病、不眠症などに対する処方箋医薬品は、 医師による診察・処方に基づいて使用します。 悪夢の原因に応じた治療が必要です。
市販の睡眠改善薬は悪夢障害の治療薬ではありません
市販の睡眠改善薬は、 一時的な寝つきの悪さなどを対象とする製品がありますが、 悪夢障害そのものへの有効性が確立した治療薬ではありません。
悪夢が頻繁に続く場合や、PTSDなどが疑われる場合には、 睡眠改善薬を自己判断で使い続けるのではなく、 医療機関で原因を確認することが重要です。
悪夢を減らすために日常生活でできること
悪夢が続く場合には、 睡眠習慣を見直し、睡眠不足やストレスなどを減らすことも大切です。
慢性的な睡眠不足を避け、無理のない睡眠時間を確保します。
生活リズムをなるべく一定に保ち、休日も極端に睡眠時間が変わらないようにします。
怖い映像や刺激の強い情報などで気分が高ぶる場合は、寝る前の視聴を控えることも一つの方法です。
睡眠の質に影響する習慣がないか確認します。飲酒で眠りやすくしようとすることはおすすめできません。
悪夢の頻度、睡眠時間、日中の眠気や不安などを記録すると、原因を考える手がかりになります。
悪夢が続き、眠れない、日中の生活に支障がある場合には、医療機関へ相談します。
※生活習慣の調整だけですべての悪夢障害が改善するわけではありません。 症状が強い場合は心理療法や背景にある病気の治療が必要になることがあります。
悪夢が続くとき、何科を受診する?
悪夢が続く場合には、 まずかかりつけ医や睡眠外来などで相談できます。
強い不安、気分の落ち込み、PTSDなどが関係している場合には、 精神科や心療内科での評価・治療が必要になることがあります。
子どもの悪夢が頻繁に続く場合は、 小児科で相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらう方法があります。
次のような場合は医療機関に相談してください
- 悪夢を頻繁に繰り返し、眠るのが怖くなっている
- 睡眠不足や疲労が強く、仕事・学校・日常生活に支障がある
- 強い恐怖体験の後から悪夢やフラッシュバックが続いている
- 気分の落ち込みや強い不安などを伴う
- 新しく使用した薬の後から悪夢が増えた
- 睡眠中に叫ぶ、殴る、蹴るなどの行動がある
- 子どもが繰り返し悪夢を見て、強く眠ることを嫌がる
- 悪夢や不眠に伴い、強い絶望感や自分を傷つけたい気持ちがある
自分を傷つける危険が差し迫っている場合や、 呼吸・意識に異常がある場合などは、緊急の医療対応が必要です。
悪夢・悪夢障害についてよくある質問
怖い夢をよく見るのは病気ですか?
悪夢を見ること自体は珍しくなく、必ずしも病気ではありません。 ただし、悪夢を繰り返して睡眠や日常生活に支障が出ている場合には、 悪夢障害などが考えられます。
悪夢を見るのはストレスが原因ですか?
ストレスや不安が関係することはありますが、 必ずしもストレスだけが原因とは限りません。 睡眠不足、PTSD、使用中の医薬品などが関係する場合もあります。
悪夢と夜驚症の違いは何ですか?
悪夢では怖い夢から目覚め、夢の内容を覚えていることが多くあります。 夜驚症では、深い睡眠中に突然叫ぶなどの症状がみられますが、 本人は十分に目覚めておらず、翌朝には覚えていないことが多いという違いがあります。
悪夢障害は治療できますか?
はい。悪夢障害には、イメージリハーサル療法などの心理療法が用いられます。 PTSDやうつ病などが関係している場合には、 背景にある病気に対する治療も重要です。
イメージリハーサル療法とは何ですか?
悪夢の内容を怖くない展開に書き換え、 起きている間にそのイメージを練習する心理療法です。 成人の悪夢障害で有効性が認められている治療選択肢の一つです。
悪夢を改善する漢方薬はありますか?
酸棗仁湯、帰脾湯、温胆湯、抑肝散加陳皮半夏など、 不眠や精神不安、神経症などに用いられる漢方薬があります。 ただし、これらは悪夢障害そのものへの治療効果が確立した薬ではありません。 症状や体質を確認して選択します。
酸棗仁湯と帰脾湯はどう違いますか?
酸棗仁湯は心身が疲れて眠れない、眠りが浅い場合などに用いられます。 帰脾湯は疲労や不眠に加えて、 精神不安、食欲低下、血色の悪さなども考慮して選択されます。
PTSDによる悪夢にも漢方薬が使われますか?
PTSDやフラッシュバックに対して、 神田橋処方などの漢方の応用が報告されています。 ただし、悪夢障害への効果が確立した標準治療ではありません。 PTSDが疑われる場合は医療機関での診断・治療が重要です。
子どもが悪夢を繰り返す場合はどうすればよいですか?
まずは安心できるように声をかけ、 睡眠環境や生活リズムを整えます。 悪夢を頻繁に繰り返す、睡眠や日中の生活に支障がある場合には、 小児科などで相談してください。
悪夢の薬は通販・処方箋なしで購入できますか?
悪夢に伴う不眠や神経症などに使用される一般用漢方薬には、 通販・オンラインで購入できる製品があります。 一方、悪夢障害そのものの治療には心理療法などが重要であり、 処方箋医薬品は医師等の処方に基づいて使用します。 カミツレ薬局では医療用医薬品の通販・郵送販売は行っていません。
悪夢に伴う不眠・漢方薬について迷ったら
「悪夢で何度も目が覚める場合は?」
「酸棗仁湯と帰脾湯のどちらが近い?」
「不安が強く眠れない場合はどの漢方を考える?」
「今飲んでいる薬と漢方を併用できる?」
「服用中の薬が悪夢に関係している可能性はある?」
カミツレ薬局では、医薬品・漢方薬に関するご相談を受け付けています。 現在の睡眠状況、悪夢の頻度、不眠や不安の有無、 使用中の医薬品などをお知らせください。
なお、悪夢障害やPTSDなどの診断は薬局ではできません。 症状が続いている場合や生活に大きな支障がある場合には、 医療機関への受診をご案内いたします。
参考文献・情報源
- 国立精神・神経医療研究センター 「睡眠時随伴症」悪夢障害・夜驚症・レム睡眠行動障害
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- Morgenthaler TI, et al. Position Paper for the Treatment of Nightmare Disorder in Adults: An American Academy of Sleep Medicine Position Paper. J Clin Sleep Med. 2018;14(6):1041-1055.
- VA/DoD Clinical Practice Guideline for Management of Posttraumatic Stress Disorder and Acute Stress Disorder(2023)
- U.S. Department of Veterans Affairs 「Clinician's Guide to Medications for PTSD」
- NHS「Night terrors and nightmares」
- Cleveland Clinic「Nightmare Disorder」
- カミツレ薬局「酸棗仁湯エキス細粒G」製品・添付文書情報
- カミツレ薬局「帰脾湯エキス細粒G」製品・添付文書情報
- カミツレ薬局「温胆湯エキス細粒G」製品・添付文書情報
- カミツレ薬局「抑肝散加陳皮半夏エキス細粒G」製品・添付文書情報
- カミツレ薬局「神田橋処方とは|PTSDのフラッシュバックと漢方」
- J-GLOBAL「トラウマを背景とするフラッシュバックへの漢方治療経験」 文献情報
本ページは、国立精神・神経医療研究センター、 厚生労働省、米国睡眠医学会(AASM)、 診療ガイドライン、査読付き医学論文、 医薬品添付文書、製薬会社等の資料をもとに、 カミツレ薬局の薬剤師が一般の方向けに整理したものです。
西洋薬については、医療現場で使用されることと、 日本で承認された効能・効果を区別しています。
漢方薬については、現代医学上の疾患名が添付文書に記載されているかだけで判断せず、 承認された症状・状態、患者の体質、臨床研究、 精神科領域等での応用経験を総合して紹介しています。
本ページで紹介する漢方薬は、 悪夢に伴う不眠や精神不安などを目標として使用が検討されるものであり、 悪夢障害そのものへの治療効果を保証するものではありません。
本ページは医学的な診断に代わるものではありません。 悪夢が繰り返し起こる場合や、PTSDなどが疑われる場合には、 医療機関でご相談ください。



