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妊娠中(妊婦)の漢方治療
妊娠中に使用される漢方薬の必須条件は「安胎」であり、安胎効果(子宮収縮抑制作用)がある生薬を配合した漢方薬などが安心して使用することができます。
一般的に、妊娠中の母体は虚証のため、過度な発汗や瀉下、利尿は避けることが原則となります。
このページに記載の漢方薬については、基本的には目標となる症状(病態)がある場合には危険性は少なく、また胎児にも害を及ぼすことがなく使用できると考えられています。
ただし、全ての漢方薬について安全性が確立しているとは言えないため、漫然使用には注意が必要のため医師や薬剤師に相談のうえ使用することが重要です。
安胎生薬
- 杜仲(とちゅう)
- 人参(にんじん)
- 白朮(びゃくじゅつ)
- 艾葉(がいよう)
- 陳皮(ちんぴ)
- 冬虫夏草(とうちゅうかそう)
- 黄耆(おうぎ)
- 黄芩(おうごん)
- 木香(もっこう)
- 香附子(こうぶし)
- 秦芁(じんぎょう)
- 蘇梗(そこう)
- 白芍(びゃくしゃく)
安胎漢方薬:当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散は、妊娠初期の子宮出血(切迫流産)に処方されることの多い漢方薬です。
現代では流産の原因は、殆ど受精卵の異常であるといわれているため、薬で流産を止めることはできませんが、出血を少なくする目的や、安胎効果(子宮収縮抑制作用)を期待して昔から使用されている、妊婦の方が安心して使用できる漢方薬です。
また、補血剤の四物湯をベースにした婦人宝(婦宝当帰膠)や連珠飲などは全身の栄養状態を改善して血の循環を改善することで妊婦の方の出産前後の体力増強や不妊の方、貧血の方などにも使用されます。
妊婦のかぜ(感冒)に使用される漢方薬
葛根湯や麻黄湯などの発汗剤の服用は原則として避け、服用する場合には短期間の使用にとどめ過度な発汗は避けるようにします。
妊娠中の頭痛、頭重、悪寒、無汗の時期には、香蘇散を第一選択薬として使用し、必要最小限の期間の使用にとどめます。
咳や痰、鼻汁、鼻閉の時期には参蘇飲などを使用し、鼻汁・水溶性の痰には小青竜湯、乾いた咳には麦門冬湯などが使用され、半表半裏の時期(往来寒熱、胸脇苦満)には、小柴胡湯や柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯などが使用されます。
妊婦の便秘に使用される漢方薬
妊娠中の便秘は、虚証の習慣性便秘で、桂枝加芍薬湯や小建中湯などを第一選択薬とし使用します。
大黄を多量に含む瀉下剤の使用は、早産や流産の危険性もあるため慎重に使用し、胃腸が弱い方の使用にも注意が必要となります。
腹痛を伴うような便秘には、桂枝加芍薬大黄湯を短期間のみ使用します。また、頑固な便秘に対しては、麻子仁丸や潤腸湯などを頓服で使用してみます。
妊婦の貧血に使用される漢方薬
妊娠中の貧血(鉄欠乏性貧血)には、補気・補血、利水が基本となります。
鉄剤との併用を原則として、当帰芍薬散や十全大補湯、加味帰脾湯などが使用されます。
また、造血効果を期待して六君子湯や人参湯を使用したり、補気・補血を目的に帰脾湯や四君子湯が使用されます。
妊娠中毒症に使用される漢方薬
妊娠中毒症の3主徴(高血圧・タンパク尿・浮腫)に対しては様々な漢方薬が使用されます。
高血圧には、三黄瀉心湯や黄連解毒湯、釣藤散、柴苓湯、当帰芍薬散などの漢方薬が使用され、タンパク尿や浮腫(むくみ)に対しては五苓散、柴苓湯、当帰芍薬散などを使用することがあります。
つわり(妊娠悪阻)に使用される漢方薬
つわりの症状には、小半夏加茯苓湯や半夏厚朴湯、人参湯、六君子湯などが使用されます。
つわりに対する漢方薬として、医療現場で最も多く処方される小半夏加茯苓湯は冷服し、少量ずつ何回にも分けて服用したり、生姜汁を数的加えると薬効が増すと言われています。
抑うつといった精神的な症状があり、特にノドの「つまり感」・「異物感」がみられる方には半夏厚朴湯が使用されます。
人参湯は、?お腹を温めて、胃腸機能を整える作用があるため、腹部の冷えが強い方や唾液の分泌が多い方に使用されます。
また、下痢、頭痛、口喝、むくみ、尿量減少など水分の滞りがあるような方の水溶性の嘔吐(つわり)に対しては五苓散なども使用されます。
食欲不振、体重減少、胃もたれなどが強い場合には漢方の胃薬といわれる六君子湯などを使用します。
ただし、「半夏」は早産や流産の危険性があるため、長期間の使用は避けるように注意が必要です。
瘀血(おけつ)に使用される漢方薬
駆瘀血剤として、桃仁、牡丹皮、紅花、牛膝などを含む漢方薬は流産や早産の危険性があるので減速は避けるとされている。
ただし、子宮筋腫の方が妊娠し出血している場合に、病証(体質)があれば桂枝茯苓丸を用いることがある。
参考・出典
- 漢方医薬学雑誌15(4):92,2007.
- 日産婦誌52(5):89,2000.
- 産婦人科の実際41(3):397,1992.
- 月間薬事36(7):1647,1994.
- 後山尚久:薬局57(8):2649,2006,治療85(1):93,2003.
- 漢方スクエア「漢方服薬指導Q&A」
- 日本臨床漢方医会
- 福岡県薬剤師会
- 産科と婦人科 産婦人科漢方ステップアップ:2023.1月号
※本記事は医薬品の情報提供を目的としており、効果には個人差があります。服用にあたっては医師または薬剤師にご相談ください。



