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東北大学の新型コロナ漢方研究と柴葛解肌湯|葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏をなぜ使った?
東北大学が2022年に研究成果を発表
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行時、 東北大学を中心とした研究グループが「葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏」を用いた臨床研究を行い、2022年11月にその研究成果を発表しました。
実はこの組み合わせを考えるうえで重要な処方となったのが、 約100年前のスペイン風邪でも使用されたと伝わる 柴葛解肌湯(さいかつげきとう)です。
研究で使われたのは「柴葛解肌湯」そのものではありません
ここは、今回の研究を理解するうえで大切なポイントです。
東北大学の研究で使用されたのは、 柴葛解肌湯エキス製剤そのものではなく、「葛根湯」と「小柴胡湯加桔梗石膏」という2種類の医療用漢方エキス製剤です。
「葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏 = 柴葛解肌湯」ではありません
生薬構成は完全に同一ではありませんが、 この2処方を組み合わせることで、 柴葛解肌湯に近い処方構成・方意を再現する方法として用いられました。
なぜ柴葛解肌湯をそのまま使わなかったのか?
柴葛解肌湯は現在、小太郎漢方製薬などから一般用医薬品として販売されています。 一方、病院などの保険診療で処方する医療用漢方エキス製剤としては、柴葛解肌湯そのものが用意されていません。
漢方診療ではこのような場合、 保険診療で使用できる複数の医療用漢方エキス製剤を組み合わせ、 本来使用したい漢方処方に近づける「合方(ごうほう)」という方法がとられることがあります。
柴葛解肌湯についても以前から、 葛根湯と小柴胡湯系の処方などを組み合わせることで近似させる方法が漢方医学の文献で紹介されてきました。
東北大学を中心とした研究でも、この組み合わせが使用されました。
東北大学が全国7施設で臨床研究
東北大学病院総合地域医療教育支援部および東北大学大学院医学系研究科の 高山真先生らの研究グループは、 軽症〜中等症IのCOVID-19患者を対象とした多施設共同研究を行いました。
ランダム化比較試験には161人が登録され、 通常の対症療法を行うグループと、 通常治療に「葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏」を追加するグループに分けて経過が比較されました。
研究で報告された主な結果
※すべての症状について漢方薬群が有意に優れていたという研究結果ではありません。 主要評価項目である感冒様症状全体の改善までの期間には、両群で有意差は認められませんでした。 呼吸不全への進行についても、統計学的な有意差ではなく「抑制傾向」として報告されています。
研究のヒントは、約100年前の「スペイン風邪」
なぜCOVID-19の研究で、このような漢方薬の組み合わせが注目されたのでしょうか。
その背景のひとつにあるのが、 1918年から世界的に流行したスペイン風邪と柴葛解肌湯の歴史です。
当時、浅田宗伯の流れをくむ漢方医・木村博昭が、 高熱を呈する患者に柴葛解肌湯などを使用していたことが後世の文献に残されており、 この治療経験は現在の日本東洋医学会の論文でも紹介されています。
約100年前のスペイン風邪で柴葛解肌湯が使われたという逸話とは?
東北大学病院前のカミツレ薬局でも問い合わせが増加
カミツレ薬局は、仙台市の東北大学病院前にある薬局です。
新型コロナウイルスの流行時には、 COVID-19と漢方薬に関する研究や情報が広がるにつれて、 柴葛解肌湯についてのお問い合わせも実際に増えていきました。
当時は製造元である小太郎漢方製薬からも柴葛解肌湯について情報提供を受け、 当薬局でも処方の特徴や研究内容を確認しながらご相談に対応していました。
スペイン風邪の時代から伝えられてきた漢方処方が、 約100年後の新たな感染症の流行をきっかけに改めて研究対象となったことは、 柴葛解肌湯を知るうえでも非常に興味深い出来事といえます。
一般用医薬品では「柴葛解肌湯」そのものを使用できます
病院で行われた研究では、医療用エキス製剤の 「葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏」という組み合わせが使用されました。
一方、一般用医薬品には 「柴葛解肌湯エキス細粒G『コタロー』」として、 柴葛解肌湯そのものが製品化されています。
柴葛解肌湯は、 高熱や悪寒、頭痛、四肢の痛み、全身倦怠感など、激しい感冒様症状に使用される漢方薬です。
柴葛解肌湯エキス細粒G「コタロー」の効能・効果
体力中等度以上で、激しい感冒様症状を示すものの次の諸症: 発熱、悪寒、頭痛、四肢の痛み、全身倦怠、口渇、食欲不振、はきけ、鼻腔乾燥、不眠
※柴葛解肌湯は「新型コロナウイルス感染症」を効能・効果として承認された医薬品ではありません。 現在販売されている製品は、上記の承認された効能・効果に基づいて使用する一般用医薬品です。
→ 新型コロナ・インフルエンザと柴葛解肌湯の総合解説はこちら
参考・出典
- Takayama S, et al. Multicenter, randomized controlled trial of traditional Japanese medicine, kakkonto with shosaikotokakikyosekko, for mild and moderate coronavirus disease patients. Front Pharmacol. 2022;13:1008946.
- 東北大学.新型コロナウイルス感染症の急性期症状に漢方薬―漢方薬投与による発熱緩和、重症化抑制を確認.2022年11月28日.
- Takayama S, et al. Prevention and Recovery of COVID-19 Patients With Kampo Medicine: Review of Case Reports and Ongoing Clinical Trials. Front Pharmacol. 2021;12:656246.
- 井齋偉矢,今井雅浩,上原明彦,他.COVID-19に対する葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏併用の使用経験.日本東洋医学雑誌 2021;72:415-419.
- 日本東洋医学雑誌.合方による保険適用外の処方の代用.1991;41:119-134.
- 小太郎漢方製薬株式会社.柴葛解肌湯エキス細粒G「コタロー」製品情報.
本記事は、東北大学の研究発表、査読付き学術論文、漢方医学文献および医薬品メーカーの製品情報をもとに、 カミツレ薬局の薬剤師が内容を確認して作成しています。
※本記事で紹介しているCOVID-19研究は、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を併用した研究です。柴葛解肌湯エキス細粒G「コタロー」そのものを使用した臨床試験ではありません。
※研究結果は新型コロナウイルス感染症に対する柴葛解肌湯の効果を保証するものではありません。
※息苦しさ、意識状態の変化、高熱が続くなど症状が強い場合には、医療機関への受診をご検討ください。



