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スペイン風邪(インフルエンザ)で語り継がれる柴葛解肌湯|約100年前の漢方治療の逸話
約100年前のインフルエンザ・パンデミック
柴葛解肌湯(さいかつげきとう)には、世界中で猛威を振るった 「スペイン風邪」流行時にも使用されたという歴史的な逸話が残されています。
その話は現在まで語り継がれ、漢方の専門書だけでなく、 日本東洋医学会の学術論文や漢方メーカーの資料などでも紹介されています。
スペイン風邪の流行時に使われた「柴葛解肌湯」
1918年から世界的に流行したスペイン風邪は、日本でも多数の患者と死者を出したインフルエンザのパンデミックでした。
当時は現在のような抗インフルエンザ薬が存在せず、日本の漢方医たちは患者の症状を見ながら、さまざまな漢方薬を使い分けて対応していました。
その一人が、漢方医学の大家・浅田宗伯の流れをくむ木村博昭です。
後に高橋道史が著書『浅田流 漢方診療の実際』に記した内容によると、木村博昭はスペイン風邪の患者に対し、症状に応じて漢方薬を使い分け、 初期から高熱を呈する患者には柴葛解肌湯や大青竜湯などを使用していたとされています。
今も語り継がれている逸話
木村医院を訪れた流感患者について、 「死亡した者は一人もいなかった」と木村博昭から聞いたという記録が、後世の書籍に残されています。
※これは現代の無作為化比較試験などによって「死亡率0%」が確認されたという意味ではありません。 また、すべての患者に柴葛解肌湯だけを使用したものではなく、症状に応じて複数の漢方薬が使い分けられていたという治療経験として伝えられているものです。
この逸話は複数の書籍・学術論文でも紹介
スペイン風邪と柴葛解肌湯の話は、一つのウェブサイトだけで語られているものではありません。 漢方の専門書や日本東洋医学会の論文など、複数の資料で紹介されています。
高橋道史が、師である木村博昭から聞いたスペイン風邪流行時の治療経験を記載。 初期から高熱を呈する患者に柴葛解肌湯などを使用したことが紹介されています。
「ウイルス感染症のパンデミックに対して漢方薬の果たす役割―スペインかぜから学ぶ―」で、 当時の木村博昭らによる漢方治療が改めて検討されています。
新型コロナウイルス感染症に対する漢方研究を扱った総説でも、 スペイン風邪の際に木村博昭らが柴葛解肌湯などを使用した治療経験が紹介されています。
なぜ激しい風邪症状に柴葛解肌湯なのか
柴葛解肌湯は、風邪のひきはじめなどに用いられる葛根湯と、 少し病状が進んだ段階にも用いられる小柴胡湯の考え方をあわせ、 さらに熱症状を考慮した生薬を組み合わせた処方です。
そのため、単に「少し寒気がする」といった風邪だけではなく、 発熱・悪寒・頭痛・体の痛み・全身倦怠感・口渇・食欲不振など、 全身に激しい症状があらわれている場合に使用されます。
柴葛解肌湯エキス細粒G「コタロー」の効能・効果
体力中等度以上で、激しい感冒様症状を示すものの次の諸症: 発熱、悪寒、頭痛、四肢の痛み、全身倦怠、口渇、食欲不振、はきけ、鼻腔乾燥、不眠
約100年前の逸話から、現在まで受け継がれる処方
スペイン風邪が流行した時代と現在では、医療環境もインフルエンザに対する治療法も大きく異なります。
それでも柴葛解肌湯が現在まで受け継がれているのは、 高い熱や悪寒、頭痛、体の痛み、全身のだるさなど、激しい感冒様症状に対応する漢方処方として現在も使用されているためです。
さらに2026年には、『日本東洋医学雑誌』に柴葛解肌湯を用いた インフルエンザウイルス感染マウスの基礎研究も報告されており、 約100年前の逸話だけではなく、現在も研究対象となっている漢方処方です。
※上記は動物を用いた基礎研究であり、人に対する有効性を証明した臨床試験ではありません。
100年後、新型コロナ流行時にも注目された「柴葛解肌湯の方意」
柴葛解肌湯の歴史は、スペイン風邪だけで終わりません。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行時には、 東北大学を中心とした研究グループが「葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏」を用いた臨床研究を行いました。
柴葛解肌湯そのものを投与した研究ではありませんが、 スペイン風邪の際に用いられた柴葛解肌湯の考え方とも関連する組み合わせとして研究されています。
新型コロナ流行時に東北大学が注目した「柴葛解肌湯の方意」とは?
→ 新型コロナ・インフルエンザと柴葛解肌湯の総合解説はこちら
参考・出典
- 高橋道史.『浅田流 漢方診療の実際』医道の日本社,1977,p.304.
- 入江康仁,中永士師明.ウイルス感染症のパンデミックに対して漢方薬の果たす役割―スペインかぜから学ぶ―.日本東洋医学雑誌 2020;71:272-283.
- 高山真ほか.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する漢方薬治療の臨床エビデンス構築―日本東洋医学会のCOVID-19に対する取り組みと学会主導臨床研究について―.日本東洋医学雑誌 2022;73:117-125.
- 中曽根美咲ほか.柴葛解肌湯のインフルエンザウイルス感染症に対する作用の基礎的解析.日本東洋医学雑誌 2026;77:9-21.
- 小太郎漢方製薬株式会社.漢方処方解説「柴葛解肌湯」.
本記事は、漢方専門書、学術論文、医薬品メーカー資料などをもとに、 一般用医薬品である柴葛解肌湯について薬剤師が内容を確認し作成しています。
※スペイン風邪に関する内容は、当時の治療経験を後世に伝えた歴史的資料・文献に基づくものです。現在販売されている柴葛解肌湯の効果を保証するものではありません。
※医薬品の効果には個人差があります。症状が強い場合や、呼吸困難、意識状態の変化などがある場合には医療機関を受診してください。



