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逆流性食道炎・胃食道逆流症(GERD)の症状と治療薬・漢方薬

逆流性食道炎・胃食道逆流症(GERD)は、胃酸などの胃の内容物が食道へ逆流し、胸やけや酸っぱいものが上がってくる感じ、喉の違和感などを引き起こす病気です。
治療にはタケキャブ、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、H2ブロッカーなどの胃酸分泌抑制薬が用いられます。また、胃薬を使用しても胃もたれやみぞおちの不快感が続く方には、六君子湯などの漢方薬が検討されることもあります。
逆流性食道炎・胃食道逆流症(GERD)とは
胃と食道のつなぎ目には、胃の内容物が逆流するのを防ぐ働きがあります。この働きが弱くなったり、一時的に緩んだりすると、胃酸などが食道へ逆流しやすくなります。
食道の粘膜は胃酸に対する防御力が胃ほど強くないため、逆流によって胸やけなどの症状や粘膜の炎症が生じます。
胃食道逆流症でよくみられる症状
- 胸のあたりが焼けるように熱くなる(胸やけ)
- 酸っぱいものや苦いものが喉・口まで上がってくる(呑酸)
- 食後や横になったときに胸やけが強くなる
- みぞおちの不快感や胃もたれ
- 喉の違和感、声がれ、慢性的な咳を伴うことがある
- 胃酸分泌抑制薬を使用しても症状が残ることがある
逆流性食道炎とGERD・NERDの違い
胃食道逆流症(GERD)は、逆流性食道炎を含む病気の総称です。
GERDには、内視鏡検査で食道の粘膜に明らかなただれが認められる「逆流性食道炎」と、明らかなた??だれが認められない「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」があります。
| 分類 | 特徴 |
|---|---|
| 胃食道逆流症(GERD) | 胃の内容物の逆流によって、不快な症状や食道の障害が起こる病気の総称です。 |
| 逆流性食道炎 | 胃酸などの逆流によって食道粘膜が傷つき、内視鏡検査でびらん(ただれ)が確認される状態です。 |
| 非びらん性胃食道逆流症(NERD) | 胸やけなどの症状があるものの、内視鏡検査では明らかなびらんが認められないタイプです。 |
胃の内容物の逆流による症状や食道の障害を含む総称です。
内視鏡検査で食道粘膜のびらんが確認されるタイプです。
胸やけなどはあるものの、明らかなびらんが確認されないタイプです。
内視鏡検査で異常が見つからなくても、逆流によって胸やけなどが起こる場合があります。一方、似た症状を起こす機能性胸やけなどもあるため、症状だけで必ずGERDと判断できるわけではありません。
逆流性食道炎・GERDの主な原因
胃食道逆流症には、胃と食道のつなぎ目の働きや、胃の内容物が逆流しやすくなる生活習慣などが関係します。
- 肥満や体重増加による腹圧の上昇
- 食べすぎや脂肪の多い食事
- 食後すぐに横になる習慣
- 食道裂孔ヘルニア
- 飲酒・喫煙などの生活習慣
- 胃や食道の運動機能の変化
また、胃の動きが低下して食べ物が長く胃に残る場合や、食道の粘膜が刺激に敏感になっている場合なども、症状に関係することがあります。
逆流性食道炎の検査・診断
診断では、胸やけや呑酸などの症状を確認し、必要に応じて胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を行います。
内視鏡検査では、食道粘膜の炎症やびらん、食道裂孔ヘルニアなどを確認します。胃酸分泌抑制薬で改善しない場合や、内視鏡所見と症状が一致しない場合には、食道の酸逆流を調べる24時間pH検査などが検討されます。
慢性的な胸やけや胃もたれでは、機能性ディスペプシア(FD)などが重なっている場合もあります。
逆流性食道炎・GERDの治療
胃食道逆流症の治療では、胃酸の逆流による刺激を減らし、胸やけなどの症状や食道粘膜の炎症を改善することを目指します。
中心となるのは胃酸分泌を抑える薬です。症状や食道炎の程度によっては、治療後も再発予防のために薬を継続する場合があります。
| 治療方法 | 内容 |
|---|---|
| 胃酸分泌抑制薬 | PPIやP-CABなどを使用し、胃酸の分泌を抑えて食道の炎症や胸やけを改善します。 |
| その他の薬物療法 | 症状に応じて制酸薬、アルギン酸塩製剤、消化管運動機能改善薬、漢方薬などを検討します。 |
| 生活習慣の改善 | 食べすぎや就寝直前の食事を避け、体重管理や食事内容の調整などを行います。 |
| 外科的治療 | 薬で十分に改善しない場合や、大きな食道裂孔ヘルニアなどがある場合に、逆流防止手術を検討します。 |
PPI・P-CABなどによって胃酸を抑え、胸やけや食道の炎症を改善します。
制酸薬、アルギン酸塩、消化管運動機能改善薬、漢方薬などがあります。
食事内容や就寝前の食事、体重などを見直します。
必要に応じて胃の内容物が逆流しにくくなる手術を行います。
逆流性食道炎・GERDに使われる主な医薬品
| 薬・成分 | 特徴・位置づけ |
|---|---|
| P-CAB ボノプラザン(タケキャブ) |
胃酸分泌を強力に抑える薬です。逆流性食道炎の治療や再発予防に使用され、重症例でも重要な選択肢です。 |
| PPI(プロトンポンプ阻害薬) ランソプラゾール、エソメプラゾール、ラベプラゾール、オメプラゾールなど |
胃酸分泌の最終段階を抑える代表的な治療薬です。逆流性食道炎・GERDの治療に広く使用されます。 |
| H2受容体拮抗薬 ファモチジンなど |
胃酸分泌を抑える薬です。比較的軽い胸やけなどに用いられ、市販薬として購入できる製品もあります。 |
| 制酸薬・アルギン酸塩製剤 炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムなど |
胃酸を中和したり、逆流による刺激を和らげたりする目的で用いられます。 |
| 消化管運動機能改善薬 モサプリドなど |
胃の動きが悪く、胃もたれなどを伴う場合に、病状に応じて併用が検討されることがあります。 |
ボノプラザンを配合し、胃酸分泌を強力に抑える薬です。
ランソプラゾール、エソメプラゾールなど。胃酸を抑える代表的な治療薬です。
ファモチジンなど。比較的軽い胸やけなどに使用します。
胃酸を中和するなどして、逆流による刺激を和らげます。
モサプリドなど。胃もたれなどを伴う場合に併用が検討されます。
治療薬は、逆流性食道炎の重症度や症状の続き方によって選択されます。特に炎症が強い場合は、PPIやP-CABによる十分な胃酸分泌抑制が重要です。
胃薬を飲んでも胸やけが改善しない場合
胃酸分泌抑制薬を使用しても、胸やけや胃もたれ、喉の違和感などが続く方もいます。
このような場合には、薬の服用方法や種類を見直すほか、胃酸以外の逆流、食道の知覚過敏、胃の運動機能の低下、機能性ディスペプシアなどが関係していないかを検討します。
治療方法として、PPIの変更やP-CABへの切り替え、必要に応じた消化管運動機能改善薬・漢方薬の併用などが検討されます。
特に六君子湯は、PPIを使用しても症状が十分に改善しない胃食道逆流症に対して、臨床研究が行われている漢方薬です。
日常生活で気をつけたいこと
胃食道逆流症では、医薬品による治療とともに、胃酸が逆流しにくい生活習慣を取り入れることも大切です。
逆流を防ぐための生活習慣
- 食べすぎを避け、1回の食事量を調整する
- 就寝前2〜3時間は食事を控える
- 食後すぐに横にならない
- 肥満がある場合は適切な体重管理を行う
- 症状が悪化する食品や飲酒を控える
- 夜間の逆流が強い場合は上半身を少し高くして寝る
脂肪の多い食事、アルコール、コーヒーなどが症状を悪化させることがありますが、影響には個人差があります。すべての食品を一律に制限するのではなく、ご自身の症状との関係を確認することが大切です。
逆流性食道炎・GERDと漢方薬
漢方薬は、胸やけだけでなく、胃もたれ、みぞおちのつかえ、げっぷ、吐き気、食欲不振、喉の違和感などを考慮して選びます。
特に六君子湯は、胃食道逆流症を対象とした臨床試験が行われており、胃酸分泌抑制薬を使用しても胃の不快感が残る場合などに検討される処方です。
六君子湯(りっくんしとう)
六君子湯は、胃腸が弱く、食欲不振・胃もたれ・吐き気・みぞおちのつかえなどが続く方に用いられる漢方薬です。
人参・白朮・茯苓・半夏など8種類の生薬を組み合わせ、胃腸の働きを整え、消化不良や食欲不振などを改善します。
六君子湯は、胃の運動機能や胃から食道への逆流に関係する働きについても研究が行われており、GERDに対する補助的な治療として検討されています。
胃食道逆流症に対する六君子湯の臨床研究
日本で実施された多施設共同研究では、PPIによる治療を受けても症状が残るGERD患者104例を対象に、PPIと六君子湯の併用を検討しました。
その結果、六君子湯を併用した群では胸やけなどの自覚症状が改善し、PPIを増量した群と同程度の症状改善が報告されました。
一方、その後のプラセボ対照試験では、対象者全体の逆流症状に有意な上乗せ効果は認められませんでしたが、一部の患者群では胃もたれなどの症状や生活の質の改善が報告されています。
このため、六君子湯は胃酸分泌抑制薬に代わるものではなく、症状や体質に応じて併用を検討する漢方薬として位置づけられています。
特に、胃酸分泌抑制薬による治療を受けながらも、食後の胃もたれやみぞおちの不快感、食欲不振などが続く方では、検討したい処方の一つです。
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
半夏瀉心湯は、胸やけやげっぷ、みぞおちのつかえ、胃のむかつきなどが気になる方に用いられる漢方薬です。
半夏・黄芩・黄連・乾姜・人参など7種類の生薬を組み合わせ、胃腸の働きを整えながら、胸やけ、消化不良、吐き気などを改善します。
特に、みぞおちがつかえた感じがあり、胃腸がゴロゴロ鳴る、軟便や下痢になりやすいといった症状を伴う方に適しています。
正式な効能・効果に「胸やけ」「げっぷ」が含まれており、GERDに似た上腹部の不快症状がある場合に検討できる処方です。
安中散(あんちゅうさん)
安中散は、胃痛や胃もたれ、胸やけ、げっぷなどを伴う胃腸虚弱の方に用いられる漢方薬です。
桂皮・延胡索・牡蛎・茴香などを組み合わせた処方で、冷えやストレスなどに伴う胃痛や胃の不快感に使用されます。
空腹時に胃が痛む、胃が冷えると調子が悪い、食後の胃もたれや胸やけが気になるといった方に適しています。
逆流性食道炎の炎症を直接治療する薬ではありませんが、胃痛や胃もたれを伴う方の関連症状に対して検討できます。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
半夏厚朴湯は、喉や食道に何かが詰まっているような違和感があり、不安感や吐き気などを伴う方に用いられる漢方薬です。
半夏・厚朴・茯苓・蘇葉・生姜の5種類の生薬を組み合わせ、喉の異物感やストレスに伴う胃腸の不調などに使用されます。
GERDでは喉の違和感が現れる場合もありますが、喉の異物感は必ずしも胃酸の逆流が原因とは限りません。
半夏厚朴湯は、喉のつかえ感や神経性胃炎などの症状に着目して選択する処方です。
そのほかの胃腸症状に用いられる漢方薬
胃腸が弱く、食欲不振・胃もたれ・吐き気・疲れやすさなどを伴う方に。
ストレスの影響で胃の調子が悪く、みぞおちのつかえや胃痛が続く方に。
食べすぎ・飲みすぎによる胃もたれ、腹部膨満感、消化不良などに。
胸やけと胃腸症状が重なる場合でも、六君子湯・半夏瀉心湯・安中散などは、それぞれ適した症状や体質が異なります。
また、漢方薬が使用される場面と、食道の炎症を治療する胃酸分泌抑制薬の役割は区別して考えることが大切です。
カミツレ薬局で相談・購入できる医薬品・漢方薬
カミツレ薬局では、胸やけ・胃もたれ・胃痛・みぞおちのつかえ・食欲不振・喉の違和感などに用いられる漢方薬を取り扱っています。
現在の治療内容や胃腸の状態、症状の現れ方などを確認しながら、適した医薬品・漢方薬についてご相談いただけます。
六君子湯Aエキス細粒「分包」三和生薬
りっくんしとう
胃もたれ・食欲不振・みぞおちのつかえに。胃腸が弱く、食後の不快感や吐き気が続く方に。PPIで十分に改善しないGERDの症状に対する臨床研究もある漢方薬です。
商品情報・購入ページを見る半夏瀉心湯Aエキス細粒「分包」三和生薬
はんげしゃしんとう
胸やけ・げっぷ・胃のむかつきに。みぞおちがつかえ、吐き気や消化不良、軟便などを伴う方に。胸やけを正式な効能・効果に持つ漢方薬です。
商品情報・購入ページを見る安中散料Aエキス細粒「分包」三和生薬
あんちゅうさん
胃痛・胃もたれ・胸やけを伴う胃腸虚弱に。お腹の冷えやストレスにより胃が痛みやすく、げっぷや食欲不振などを伴う方に用いられる漢方薬です。
商品情報・購入ページを見る半夏厚朴湯エキス細粒G「コタロー」
はんげこうぼくとう
喉のつかえ感・神経性胃炎・吐き気に。喉や食道に何かが引っかかるような違和感があり、不安やストレスに伴う胃腸の不調が気になる方に。
商品情報・購入ページを見るその他の胃腸症状に用いられる漢方薬
香砂六君子湯エキス細粒G「コタロー」 ― 胃腸虚弱、食欲不振、みぞおちのつかえ、吐き気などに。
柴芍六君子湯エキス細粒G「コタロー」 ― ストレスに伴う神経性胃炎、胃痛、消化不良などに。
加味平胃散エキス細粒G「コタロー」 ― 食べすぎによる胃もたれ、腹部膨満感、消化不良などに。
胃腸症状に関する漢方薬の比較
胃腸の不調に用いられる漢方薬の比較 ― 胃痛・胃もたれ・食欲不振などに用いる漢方薬の特徴を紹介しています。
掲載している漢方薬は、胃もたれ・胸やけ・胃痛・喉の違和感など、それぞれの承認効能や関連症状をもとに紹介しています。すべての製品に逆流性食道炎そのものの治療効能があるわけではありません。
逆流性食道炎・GERDに使える市販薬はある?
胸やけや胃酸の逆流に伴う不快感に使用できる市販薬には、胃酸分泌を抑える薬や胃酸を中和する薬などがあります。
例えば、ファモチジンを配合したH2ブロッカーは、第1類医薬品として販売されている製品があります。また、2025年にはPPI成分のランソプラゾールを配合した市販薬「タケプロンs」も発売されました。
タケプロンs(ランソプラゾール)
タケプロンsは、胃酸の逆流などによる胸やけ、胃もたれ、胃痛に使用するPPI(プロトンポンプ阻害薬)を配合した医薬品です。
有効成分としてランソプラゾール15mgを配合し、胃酸の分泌を強力に抑えます。
ただし、タケプロンsは要指導医薬品であり、薬剤師による対面での確認・販売が必要です。通販では購入できません。
また、2週間を超えて継続服用できないなどの使用条件があり、医療用のPPIによる長期的な逆流性食道炎治療とは区別する必要があります。
H2ブロッカー・制酸薬など
ファモチジンなどのH2ブロッカーを配合した市販薬は、一時的な胸やけや胃痛などに用いられます。販売条件を満たす場合には、オンラインで購入できる第1類医薬品もあります。
また、胃酸を中和する制酸薬や胃の不快感を和らげる胃腸薬などもあり、症状に応じて選択できます。
市販薬を使用しても症状が続く場合や、逆流性食道炎と診断されている方では、必要な治療が異なる場合があります。自己判断で胃酸分泌抑制薬を重複して使用しないでください。
逆流性食道炎の薬は通販・処方箋なしで購入できる?
逆流性食道炎の治療に用いられるタケキャブや医療用PPIなどの処方箋医薬品は、医療機関での診察・処方箋が必要です。
一方、胸やけや胃痛などに使用できる一部の市販薬や、六君子湯・半夏瀉心湯・安中散などの一般用漢方薬には、処方箋なしで通販・オンライン購入できる製品があります。
ただし、市販薬の中でも要指導医薬品に該当する製品は、薬剤師による対面販売が必要です。
カミツレ薬局では、一般用漢方薬をオンラインで取り扱っているほか、処方箋医薬品以外の医療用医薬品を条件に応じて店舗で対面販売する場合もあります。医療用医薬品の通販・郵送販売は行っていません。
胸やけだけでなく、胃もたれ・食欲不振・吐き気・喉の違和感などが続く方には、こうした関連症状や体質に応じた漢方薬についてもご相談いただけます。
食べ物が飲み込みにくい、飲み込むと痛む、吐血・黒色便、原因不明の体重減少などがある場合には、食道や胃の病気を確認する必要があります。また、突然の強い胸痛や息苦しさなどがある場合は、心臓の病気の可能性もあるため、速やかに医療機関での評価が必要です。
胸やけ・胃もたれ・逆流性食道炎の漢方薬のご相談
「胃薬を飲んでも胸やけが残る」「六君子湯と半夏瀉心湯はどう違う?」「食後の胃もたれや喉の違和感も気になる」「病院の胃薬と漢方薬を併用できる?」など、お薬についてお気軽にご相談ください。

参考文献・情報源
- 日本消化器病学会「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021」
- MSDマニュアル家庭版「胃食道逆流症(GERD)」
- Tominaga K, et al. Rikkunshito improves symptoms in PPI-refractory GERD patients. Journal of Gastroenterology. 2012;47:284?292.
- Tominaga K, et al. A randomized, placebo-controlled, double-blind clinical trial of rikkunshito for PPI-refractory NERD: the G-PRIDE study. Journal of Gastroenterology. 2014;49:1392?1405.
- アリナミン製薬「タケプロンs」公式製品情報・効能・使用条件
執筆・監修:カミツレ薬局 薬剤師 河津伸也
宮城県仙台市・東北大学病院前
本ページは、医薬品添付文書や医学・薬学資料に基づき、一般の方向けにまとめています。



