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甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状と治療薬・漢方薬

甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰につくられ、身体の新陳代謝が必要以上に活発になる病気です。動悸、手の震え、汗をかきやすい、暑がり、食欲があるのに体重が減るなどの症状が現れます。
代表的な原因がバセドウ病です。治療にはメルカゾールなどの抗甲状腺薬を使用し、必要に応じてアイソトープ治療や手術も検討します。また、治療中の動悸・不安感・立ちくらみなど、個々の症状に対して漢方薬を検討する場合の考え方も紹介します。
甲状腺機能亢進症・バセドウ病とは
甲状腺は首の前側、のどぼとけの下にある蝶のような形をした臓器で、全身の代謝を調整する甲状腺ホルモンを分泌しています。
甲状腺ホルモンが過剰につくられる状態を「甲状腺機能亢進症」と呼び、その代表的な原因が「バセドウ病」です。
つまり、甲状腺機能亢進症は甲状腺の働きが高まりすぎている状態を表す名称で、バセドウ病はその原因となる病気の一つです。両者は同じ意味で使われることもありますが、厳密には異なります。
バセドウ病が起こる原因
バセドウ病は、免疫の働きによって甲状腺を刺激する抗体(TSH受容体抗体:TRAb)がつくられ、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる自己免疫疾患です。
甲状腺機能亢進症には、バセドウ病のほか、甲状腺の一部が過剰にホルモンをつくる機能性結節などもあります。また、甲状腺炎によって蓄えられていたホルモンが血液中に流れ出る「甲状腺中毒症」は、症状が似ていても治療方法が異なります。
甲状腺機能亢進症の主な症状
- 心臓・循環器:動悸、脈が速い、息切れ、不整脈
- 代謝・全身:暑がり、汗が多い、疲れやすい、体重減少
- 神経・精神面:手の震え、イライラ、不安感、不眠、落ち着かない
- 胃腸:食欲の増加、軟便、下痢
- その他:筋力低下、首の腫れ、月経不順など
特に、食欲があるのに痩せる、安静にしていても脈が速い、以前より汗をかきやすくなったといった変化が特徴的です。
バセドウ病では、目が突出したり、まぶたが腫れたり、物が二重に見えたりする「甲状腺眼症」を伴うこともあります。ただし、すべての方に目の症状が現れるわけではありません。
診断に用いられる検査
診断では、血液検査で甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモン(FT3・FT4)を測定します。
一般的な甲状腺機能亢進症では、TSHが低く、FT3やFT4が高くなることが特徴です。さらにTRAbを測定し、バセドウ病かどうかを調べます。
必要に応じて甲状腺超音波検査やシンチグラフィなどを行い、無痛性甲状腺炎や機能性結節など、ほかの甲状腺疾患と区別します。
甲状腺機能亢進症・バセドウ病の治療
バセドウ病の治療では、過剰な甲状腺ホルモンの産生を抑え、正常な甲状腺機能を維持することが重要です。
日本では抗甲状腺薬による治療が広く行われており、薬の効果や副作用、甲状腺の大きさ、再発の状況などに応じて、アイソトープ治療や手術を検討します。
| 治療方法 | 内容 |
|---|---|
| 抗甲状腺薬 | メルカゾールなどで甲状腺ホルモンの産生を抑えます。日本で一般的に行われる治療方法です。 |
| 症状を和らげる薬 | 動悸や脈の速さ、手の震えなどが強い場合には、β遮断薬などを併用することがあります。 |
| 放射性ヨウ素内用療法 | 放射性ヨウ素を服用し、甲状腺の働きを抑える治療です。アイソトープ治療とも呼ばれます。 |
| 手術 | 甲状腺を摘出する治療です。甲状腺の腫れが大きい場合や、薬による治療が難しい場合などに検討されます。 |
メルカゾールなどで甲状腺ホルモンの産生を抑えます。
動悸や頻脈、手の震えなどに対してβ遮断薬などを使用します。
放射性ヨウ素を用いて甲状腺の働きを抑える治療です。
甲状腺を摘出して、過剰な甲状腺ホルモンの産生を抑えます。
甲状腺機能亢進症に使われる主な医薬品
| 薬・成分 | 特徴・位置づけ |
|---|---|
| チアマゾール メルカゾールなど |
甲状腺ホルモンの合成を抑える抗甲状腺薬です。バセドウ病の代表的な治療薬で、通常は第一選択となります。 |
| プロピルチオウラシル プロパジール・チウラジール |
甲状腺ホルモンの合成を抑える抗甲状腺薬です。妊娠初期など、患者の状態に応じて選択される場合があります。 |
| β遮断薬 プロプラノロールなど |
動悸、頻脈、手の震えなどを和らげる薬です。甲状腺ホルモンの産生を直接抑えることが主な目的ではありません。 |
| ヨウ化カリウム | 甲状腺ホルモンの産生・放出を一時的に抑える目的で、重症例や手術前など、状態に応じて使用されます。 |
甲状腺ホルモンの合成を抑える、バセドウ病の代表的な治療薬です。
プロパジール・チウラジールなど。妊娠初期などの状況に応じて選ばれる抗甲状腺薬です。
動悸・頻脈・手の震えなどの症状を和らげます。
甲状腺ホルモンの働きを一時的に抑える目的で使用されます。
メルカゾール(チアマゾール)
メルカゾールは、甲状腺機能亢進症の治療に用いられる代表的な医療用医薬品です。甲状腺ホルモンが過剰につくられるのを抑え、ホルモン値を正常な状態に近づけます。
バセドウ病では、治療開始後に甲状腺ホルモン値を確認しながら用量を調整します。ホルモン値が落ち着くにつれて、動悸、発汗、手の震え、体重減少などの症状も改善が期待できます。
治療は数か月で終わるとは限らず、年単位で服用を続ける場合もあります。安定して薬を中止できる「寛解」を目指しますが、中止後に再発することもあるため、定期的な検査が重要です。
抗甲状腺薬の副作用と定期検査
メルカゾールなどの抗甲状腺薬では、まれに白血球の一種が著しく減少する無顆粒球症や、肝機能障害などが起こることがあります。
特に服用開始後2か月間は、原則として2週間ごとの血液検査が必要です。服用中に発熱や強いのどの痛みが現れた場合は、無顆粒球症の可能性があるため、服用を中止して速やかに医療機関で血液検査を受けてください。
アイソトープ治療・手術を選ぶ場合
抗甲状腺薬で十分な効果が得られない場合、副作用で継続が難しい場合、再発を繰り返す場合などには、放射性ヨウ素内用療法や手術が検討されます。
これらの治療後は甲状腺機能が低下し、甲状腺ホルモン製剤(レボチロキシンなど)による補充が必要になる場合があります。
また、バセドウ病に伴う目の症状は、甲状腺ホルモンの値が改善しても別途治療が必要なことがあります。甲状腺眼症の状態も考慮して治療方法を選びます。
甲状腺機能亢進症の治療中に高熱、激しい動悸、意識の混乱、著しい下痢や嘔吐などが現れた場合は、甲状腺クリーゼという重篤な状態の可能性があり、緊急の医療対応が必要です。また、妊娠を希望する方や妊娠中の方は、抗甲状腺薬の選択が通常と異なるため、妊娠前から治療方針を確認することが重要です。
バセドウ病の治療中に気をつけたいこと
バセドウ病は、治療によって甲状腺ホルモン値が安定すれば、日常生活を送りやすくなる病気です。一方、治療を中断したり、ホルモン値が高い状態が続いたりすると、動悸や不整脈などの症状が悪化することがあります。
日常生活で意識したいこと
- 服薬と定期検査:自己判断で薬を中止せず、甲状腺ホルモン値を確認する
- 十分な休息:ホルモン値が高く、動悸や疲労感が強い時期は無理な運動を控える
- 禁煙:喫煙はバセドウ病眼症の発症や悪化に関係するため、禁煙が重要
- ヨウ素の摂取:昆布などの大量摂取やヨウ素サプリメントの使用については、治療状況に応じて確認する
- 症状の変化:動悸・発汗・体重変化などが続く場合は、甲状腺機能の変動も考慮する
バセドウ病は自己免疫性の病気であり、ストレスや生活習慣だけが原因ではありません。生活習慣を整えながら、必要な薬物療法と検査を継続することが基本となります。
甲状腺機能亢進症・バセドウ病と漢方薬
バセドウ病の治療では、甲状腺ホルモンの過剰な産生を抑えることが最も重要です。漢方薬はメルカゾールなどの抗甲状腺薬に代わるものではありません。
一方、甲状腺機能が適切に管理されている方でも、動悸・不安感・めまい・立ちくらみ・のぼせ・不眠などの不調が気になることがあります。そのような場合には、症状の原因を確認したうえで、漢方薬の効能・効果や体質に合うかを検討することができます。
定悸飲(ていきいん)
定悸飲は、動悸や不安感が気になる方に用いられる漢方薬です。体力が中等度で、動悸に加えてめまい・ふらつき・のぼせなどを伴う方に適しています。
苓桂朮甘湯を基本として、牡蛎・呉茱萸・李皮を加えた処方で、動悸や不安神経症に効能・効果が認められています。
バセドウ病の治療中に動悸や不安感が気になる場合には、まず甲状腺ホルモン値や心臓の状態を確認することが大切です。そのうえで、症状の特徴が定悸飲に合う場合に、漢方薬の選択肢として検討できます。
動悸と不安感が重なる方に
定悸飲エキス錠N「コタロー」は、体力が中等度で、ときにめまい・ふらつき・のぼせがある方の動悸・不安神経症に効能・効果が認められています。
甲状腺機能亢進症そのものを治療する医薬品ではありませんが、甲状腺機能が安定した後にも動悸や不安感などが気になる場合には、症状の原因や併用薬を確認しながら検討できる処方です。
連珠飲(れんじゅいん)
連珠飲は、動悸・めまい・立ちくらみ・息切れなどが気になる方に用いられる漢方薬です。ときにのぼせやふらつきがあり、体力が中等度またはやや虚弱な方に適しています。
血の巡りを整える四物湯と、水分代謝に働きかける苓桂朮甘湯を組み合わせた処方で、動悸やめまいなど複数の不調に用いられます。
更年期障害にも効能・効果が認められており、治療中に感じる不調が甲状腺機能の異常だけによるものではない場合には、症状や体質に合わせて検討されることがあります。
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
苓桂朮甘湯は、めまい・立ちくらみ・ふらつき・動悸などに用いられる漢方薬です。体力が中等度以下で、めまいに加えて頭痛や神経過敏などがみられる方にも検討されます。
茯苓・桂皮・白朮・甘草の4種類の生薬からなる処方で、身体の水分代謝を整え、めまいやふらつきなどに働きかけます。
定悸飲や連珠飲にも含まれる基本的な処方で、特にめまいや立ちくらみが中心の方に検討されます。
その他の関連する症状に用いられる漢方薬
のぼせ・イライラ・不眠などに。更年期障害などを伴い、精神的な緊張やほてりが気になる方に。
甲状腺機能亢進症では、動悸や発汗、不眠、不安感などが甲状腺ホルモンの過剰によって起こることがあります。ホルモン値が十分に管理されていない場合には、その治療を優先することが重要です。
漢方薬は、甲状腺の状態が安定しているか、ほかに症状の原因がないかを確認したうえで、実際の症状や体質に合わせて選択します。
カミツレ薬局で相談・購入できる漢方薬
カミツレ薬局では、動悸・めまい・立ちくらみ・不安感などに用いられる漢方薬を取り扱っています。甲状腺疾患の治療中の方についても、現在の甲状腺機能や服用薬、症状の経過などを確認しながらご相談いただけます。
定悸飲エキス錠N「コタロー」
ていきいん
動悸・不安神経症に。緊張や不安感に伴う動悸が気になる方や、めまい・ふらつき・のぼせなどを伴う方に用いられる漢方薬です。
商品情報・購入ページを見る連珠飲エキス細粒G「コタロー」
れんじゅいん
動悸・めまい・立ちくらみ・息切れに。血の巡りと水分代謝に働きかけ、のぼせやふらつきなど複数の不調が気になる方に用いられる漢方薬です。
商品情報・購入ページを見るこれらの漢方薬は、甲状腺ホルモンの産生を抑える医薬品ではありません。甲状腺機能亢進症の治療中に使用を検討する場合は、現在の甲状腺ホルモン値や服用薬、心臓の状態などを確認する必要があります。
バセドウ病の薬は通販・処方箋なしで購入できる?
バセドウ病の治療では、メルカゾール(チアマゾール)やプロパジール(プロピルチオウラシル)などの抗甲状腺薬が使用されます。
これらの抗甲状腺薬は処方箋医薬品であり、医療機関での診察・処方箋が必要です。甲状腺ホルモン値を確認しながら用量を調整する必要があり、定期的な血液検査も重要となります。
一方、定悸飲・連珠飲・苓桂朮甘湯などの一般用漢方薬には、動悸・めまい・立ちくらみなどに効能・効果が認められた製品があり、処方箋なしで通販・オンライン購入できます。
ただし、甲状腺機能亢進症による動悸や頻脈は、甲状腺ホルモンの過剰が原因となっている場合があります。漢方薬で症状を抑えることだけを目的とせず、甲状腺機能の管理と症状に応じた医薬品を適切に使い分けることが大切です。
カミツレ薬局では、処方箋医薬品以外の医療用医薬品を店舗で対面販売する場合もありますが、医療用医薬品の通販・郵送販売は行っていません。
漢方薬にも副作用や飲み合わせがあります。特に甘草を含む処方では、まれに低カリウム血症などを起こすことがあり、不整脈などのある方では注意が必要です。複数の漢方薬の併用や抗甲状腺薬との併用についても、事前に確認してください。
甲状腺疾患の治療中に気になる症状・漢方薬のご相談
「バセドウ病の治療中に動悸が気になる」「定悸飲と連珠飲はどう違う?」「めまいや不安感に使える漢方薬は?」「メルカゾールと漢方薬を併用できる?」など、お薬についてお気軽にご相談ください。
参考文献・情報源
執筆・監修:カミツレ薬局 薬剤師 河津伸也
宮城県仙台市・東北大学病院前
本ページは、医薬品添付文書や医学・薬学資料に基づき、一般の方向けにまとめています。



