カート
ユーザー
絞り込む
カテゴリー
グループ
コンテンツ
  • ホーム
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と漢方薬|排卵障害・月経不順に対する漢方医学の考え方

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と漢方薬|排卵障害・月経不順に対する漢方医学の考え方

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:Polycystic Ovary Syndrome)は、排卵がうまく起こりにくくなり、月経不順や無月経、不妊などにつながることがある疾患です。
卵巣に多数の小さな卵胞がみられることに加え、排卵に関係するホルモンや男性ホルモン(アンドロゲン)のバランスなど、さまざまな要因が関係しています。

PCOSでは、次のような症状がみられることがあります。

  • 月経周期が長い、月経が不規則
  • 数か月間、月経が来ないことがある
  • 排卵しにくく、妊娠しにくい
  • 多毛、にきび、脱毛などが気になる
  • 体重が増えやすい、肥満を伴う
  • 血糖値やインスリンの異常を伴うことがある

ただし、PCOSの症状には個人差が大きく、痩せ型の方でも発症します。
また、卵巣に小さな卵胞が多くみられるだけで必ずPCOSと診断されるわけではありません。

PCOSは「卵巣に嚢胞がある病気」ではありません

「多嚢胞性卵巣症候群」という名前から、卵巣に大きな嚢胞がたくさんできる病気と思われることがありますが、実際には少し異なります。
PCOSでみられるのは、排卵まで十分に発育できなかった小さな卵胞が卵巣内に多数存在している状態です。

正常な月経周期では、複数の卵胞の中から一つの卵胞が大きく育ち、排卵に至ります。
一方、PCOSでは卵胞の発育が途中で止まりやすく、排卵が起こりにくくなることがあります。そのため、小さな卵胞が卵巣内に多数みられるようになります。

以前は超音波検査で、小さな卵胞が卵巣の周辺に並ぶ「ネックレスサイン」がPCOSの特徴としてよく知られていましたが、現在は超音波所見だけではなく、月経周期、ホルモン、AMHなどを含めて総合的に診断します。

2024年に日本のPCOS診断基準が変わりました

日本産科婦人科学会では、PCOSに関する新しい知見を踏まえ、2024年から診断基準を改定しています。
現在の日本の診断基準では、成人女性について、基本的に次の3項目をすべて満たす場合にPCOSと診断します。

  • 月経周期異常:無月経、希発月経、無排卵周期症など
  • 多嚢胞卵巣またはAMH高値
  • アンドロゲン過剰症またはLH高値

大きな変更点の一つが、AMH(抗ミュラー管ホルモン)高値を多嚢胞卵巣所見の代わりに使用できるようになったことです。
AMHは卵巣に存在する小さな卵胞から分泌されるホルモンで、PCOSでは高値になることがあります。

ただし、AMHが高いという理由だけでPCOSと診断できるわけではありません。月経周期やアンドロゲン、LHなども含めて総合的に判断します。

PCOSではなぜ排卵しにくくなる?

PCOSの原因は一つではありません。
卵巣の働きだけではなく、脳下垂体から分泌されるLH・FSHなどのホルモン、男性ホルモン(アンドロゲン)、インスリン抵抗性、遺伝的な体質などが複雑に関係していると考えられています。

特にPCOSでは、アンドロゲンが過剰になることで卵胞の正常な発育が妨げられ、排卵が起こりにくくなることがあります。
また、一部の方ではインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」がみられます。

インスリン抵抗性があると、それを補うためにインスリンが多く分泌される「高インスリン血症」になり、卵巣でのアンドロゲン産生をさらに促すことがあります。
このため、PCOSでは「排卵障害」「アンドロゲン過剰」「インスリン抵抗性」がお互いに関連している場合があります。

PCOSでは妊娠できない?

PCOSは排卵障害を起こすため、不妊症の原因の一つになります。
しかし、PCOSだから妊娠できないということではありません。

自然に排卵して妊娠する方もいますし、排卵誘発薬などによって排卵を起こしやすくすることで妊娠につながるケースも多くあります。
妊娠を希望する場合には、年齢、月経周期、排卵の有無、卵管や精子などその他の不妊原因も含めて確認しながら治療方針を考えていきます。

西洋医学ではPCOSをどのように治療する?

PCOSの治療は、「現在妊娠を希望しているかどうか」によって大きく異なります。
2025年に日本産科婦人科学会から新しいPCOS治療指針が公表されており、症状や体格、耐糖能、妊娠希望の有無などに応じて治療を選択します。

妊娠を希望していない場合

排卵が長期間起こらず月経が来ない状態が続くと、子宮内膜が長期間エストロゲンの刺激を受けるため、子宮内膜増殖症などのリスクが高くなることがあります。
そのため、妊娠を希望していない場合でも、月経を長期間放置せず、定期的に子宮内膜をリセットすることが重要です。

治療としては、黄体ホルモン(プロゲスチン)を周期的に使用する治療や、月経不順に加えて多毛・にきびなどがある場合には、低用量経口避妊薬(OC)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)などが用いられることがあります。

妊娠を希望する場合|排卵誘発

妊娠を希望するPCOSでは、排卵が起こっていない場合に排卵誘発治療を行います。
現在の日本の治療指針では、非肥満のPCOSに対する排卵誘発薬として、レトロゾールが第一選択として推奨されています。

レトロゾール(商品名:フェマーラなど)は、本来アロマターゼ阻害薬と呼ばれる薬ですが、エストロゲン産生を一時的に抑えることでFSHの分泌を促し、卵胞の発育を促進します。
国際的なPCOS診療ガイドラインでも、他に不妊原因がない無排卵性PCOSに対して、レトロゾールが第一選択の排卵誘発薬として推奨されています。

レトロゾールが使用できない場合や、患者さんの状態によっては、以前から広く使用されてきたクロミフェンクエン酸塩(商品名:クロミッドなど)が使用されることもあります。

インスリン抵抗性・耐糖能異常がある場合|メトホルミン

PCOSでは、肥満の有無にかかわらずインスリン抵抗性や耐糖能異常を伴うことがあります。
このような場合に使用されることがあるのが、糖尿病治療薬としても知られるメトホルミン(商品名:メトグルコなど)です。

メトホルミンはインスリン抵抗性を改善することで、血糖・インスリンの状態を整え、PCOSでは排卵機能の改善につながることがあります。
特に、肥満・耐糖能異常・インスリン抵抗性があり、レトロゾールやクロミフェンのみでは十分に排卵しない場合には、排卵誘発薬とメトホルミンを組み合わせることもあります。

内服薬で十分に排卵しない場合

レトロゾールやクロミフェンなどの内服薬で十分な排卵が得られない場合には、FSH製剤やhMG製剤などの注射薬を用いて卵胞を育てる治療が行われることがあります。

さらに、患者さんの年齢や不妊期間、ほかの不妊原因などによっては、人工授精や体外受精・顕微授精などの生殖補助医療へ進む場合もあります。

PCOSでは複数の卵胞が同時に発育しやすいため、排卵誘発を行う際には卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠にも注意しながら治療を行います。

肥満を伴うPCOSでは生活習慣の改善も大切

肥満を伴うPCOSでは、体重を減らすことでインスリン抵抗性やホルモンバランスが改善し、排卵が再開することがあります。
日本産科婦人科学会の2025年の治療指針では、BMI25kg/m?以上のPCOSでは、3〜6か月で体重の5〜10%程度の減量を目標とすることが示されています。

実際に体重の5%程度を減らすだけでも、排卵障害やインスリン抵抗性などが改善することがあります。
ただし、痩せ型のPCOSでは減量が必要なわけではありません。PCOSは「太っている人だけの病気」ではないため、その方の体格や代謝状態に合わせて考える必要があります。

漢方医学ではPCOSをどのように考える?

西洋医学では、PCOSを排卵障害、アンドロゲン過剰、インスリン抵抗性などの病態から考えます。
一方、漢方医学では、同じPCOSであっても全員を同じ状態とは考えず、月経周期、冷え、ほてり、体格、ストレス、むくみ、胃腸の状態などを確認しながら、その方の体質を判断します。

PCOSでみられる代表的な漢方医学的な状態には、次のようなものがあります。

  • ストレスや緊張の影響が強い「肝鬱気滞」
  • 血流の滞りがみられる「血瘀」
  • 血や栄養が不足している「血虚」
  • 水分や代謝物の滞りがみられる「痰飲・痰湿」
  • 生殖機能を支える力が不足した「腎虚」
  • 胃腸が弱く、気や栄養を十分につくれない「脾気虚」
  • 脾気虚に冷えが加わった「脾陽虚」

これらは一つだけとは限らず、「腎虚+血瘀」「肝鬱気滞+痰湿」のように複数の状態が重なっている場合もあります。

ストレスや月経不順が目立つ場合|肝鬱気滞

仕事や生活上のストレスが強く、それに伴って月経周期が乱れたり、月経前にイライラや気分の落ち込みが強くなったりする場合、漢方医学では「肝鬱気滞(かんうつきたい)」を考えることがあります。

漢方でいう「肝」は、自律神経や情緒の安定、気の巡りなどと関係する概念です。
強い緊張やストレスが続くことで気の流れが滞り、月経周期や排卵にも影響している状態として捉えます。

  • ストレスが強い
  • イライラしやすい
  • 月経周期が不規則
  • 月経前に症状が悪化する
  • 胸やお腹が張る感じがある

代表的な処方として四逆散(しぎゃくさん)などがあります。
また、イライラや月経不順に加えて、ほてりや頭痛などを伴う場合には、加味逍遙散(かみしょうようさん)などが検討されることもあります。

月経痛や血流の滞りがある場合|血瘀(けつお)

月経痛が強い、月経血に血塊が多い、肩こりや頭痛があるなどの場合には、漢方医学では「血瘀」と考えることがあります。

血瘀とは、血の流れが滞りやすい状態を表す漢方医学上の概念です。
西洋医学上の「血液が固まりやすい」という意味と完全に同じではありませんが、骨盤内を含めた血流の状態を重視する考え方です。

  • 月経痛が強い
  • 月経血に血の塊が多い
  • 肩こりや頭痛がある
  • 冷えとのぼせが混在する

代表的な処方としては、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などがあります。
桂枝茯苓丸は、比較的体力があり、月経痛や下腹部の張り、のぼせと冷えなどを伴う「血瘀」に広く使用される代表的な漢方薬です。

同じ血瘀でも、疲れやすく、手足の冷えや貧血傾向などを伴う場合には、芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)が検討されることがあります。
芎帰調血飲第一加減は、血の巡りを整えるだけでなく、血を補いながら気の巡りも整える処方で、月経不順や冷え、疲労感などを伴う方に使用されます。

一方、体力が比較的あり、便秘傾向が強く、月経不順や月経痛、腹部の張りなどを伴う場合には、通導散(つうどうさん)が使用されることもあります。
通導散は、漢方医学では「気滞血瘀」に用いる代表的な処方の一つで、特に便秘を伴う実証・熱証寄りのタイプに適しています。

体重増加・むくみなどがある場合|痰飲・痰湿

漢方医学では、体内の水分や代謝物がうまく処理されず、余分なものが滞った状態を「痰飲(たんいん)」や「痰湿(たんしつ)」と呼びます。

PCOSで、体重が増えやすい、身体が重い、むくみやすい、舌に厚い苔がつくなどの場合には、このような状態が関係していると考えることがあります。

ただし、「肥満=痰湿」という意味ではありません。痩せ型のPCOSも存在するため、体重だけで判断するのではなく、胃腸の状態、水分代謝、舌の状態などを含めて判断します。

痰飲・痰湿を改善する処方として、体質によって二陳湯(にちんとう)などが検討されることがあります。

生殖機能を支える力が不足している場合|腎虚(じんきょ)

漢方医学における「腎」は、西洋医学の腎臓だけを意味するものではなく、成長・発育・生殖・加齢などに関係する生命力の基礎として考えられています。

月経周期が不安定、排卵しにくい、疲れやすい、腰や下半身がだるいなどの場合には、「腎虚」が関係していると考えることがあります。

ほてりや寝汗などを伴う場合には六味丸(ろくみがん)、冷えが強い場合には八味地黄丸(はちみじおうがん)、さらにむくみなどを伴う場合には牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などが検討されることがあります。

冷え・貧血傾向・月経不順がある場合|血虚(けっきょ)

漢方医学では、身体や子宮などを養う「血」が不足している状態を「血虚(けっきょ)」といいます。
月経量が少ない、月経周期が不安定、冷えやすい、顔色がすぐれない、疲れやすい、めまいがあるなどの場合には、血虚が関係していると考えることがあります。

  • 月経量が少ない
  • 月経周期が不規則
  • 手足が冷えやすい
  • 疲れやすい
  • めまいや立ちくらみがある

このような場合には、血を補いながら身体を養う漢方薬が検討されます。
代表的な処方としては、冷えや貧血傾向、むくみなどを伴う場合に当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などがあります。
また、小太郎漢方製薬の一般用医薬品である婦人宝(ふじんほう)も、当帰や阿膠、地黄、芍薬、川芎などを配合し、冷え症、貧血、生理不順、生理痛など女性特有の症状に用いられる漢方薬です。
PCOSそのものに対する治療薬ではありませんが、月経不順に加えて冷えや貧血傾向、疲れやすさなどがみられる場合には、体質や症状に応じて選択肢の一つとなります。

胃腸が弱く疲れやすい場合|脾気虚・脾陽虚

漢方医学では、食べ物から身体に必要な「気」や「血」をつくり出す働きを担うものを「脾」と考えます。
胃腸が弱く、食欲がない、疲れやすい、身体が重いといった状態では「脾気虚(ひききょ)」が関係していることがあります。

さらに、お腹や手足が冷えやすい、下痢をしやすいなど冷えの症状が加わる場合には「脾陽虚(ひようきょ)」として考えることもあります。

このような場合には、単に排卵だけに働きかけるのではなく、胃腸の働きや体力を補いながら全身状態を整えていくことを目標として漢方薬を選びます。

PCOSに対する漢方薬の研究もあります

PCOSに対する漢方薬については、西洋薬ほど大規模な研究は多くありませんが、いくつかの臨床研究が報告されています。

その一つが温経湯(うんけいとう)です。
PCOSを含むLH高値の排卵障害患者を対象とした臨床研究では、温経湯の服用によってLH値の低下や卵胞発育、月経周期・排卵の改善がみられたことが報告されています。

また、PCOS患者を対象に、当帰芍薬散や桂枝茯苓丸などを体質に応じて使用した後、十分な排卵が得られなかった症例を温経湯へ変更して検討した臨床研究も報告されています。

ただし、PCOSに対する漢方薬の研究は小規模なものが多く、現在のところレトロゾールなどの標準的な排卵誘発治療に代わる治療として有効性が確立しているわけではありません。
漢方薬は、月経不順だけでなく、冷え、ほてり、ストレス、月経痛、疲労、胃腸症状など、その方が同時に抱えている体質や症状まで含めて考えられることが特徴です。

PCOSの漢方薬は「この処方一つ」とは決まりません

PCOSという同じ診断であっても、漢方医学では一人ひとりの状態によって使用する処方が異なります。

たとえば、ストレスが強く月経が乱れている方と、冷えや疲労が強い方、月経痛や血流の滞りが目立つ方、体重増加やむくみがみられる方では、漢方医学的には異なる状態として考えます。

そのため、PCOSに対して漢方薬を選択する場合には、月経周期だけでなく、冷えやほてり、体格、胃腸の状態、睡眠、ストレス、月経痛、現在行っている不妊治療や使用中のお薬なども確認したうえで選択することが大切です。

PCOSや漢方選択でお悩みの際はLINEで相談!

LINE友だち追加

東北大学病院前にあるカミツレ薬局の
薬剤師または登録販売者が対応いたします。

PCOSの漢方選び・通販はカミツレ薬局へご相談ください

PCOSに使用される漢方薬は、月経不順や冷えなどの症状を整える目的で使用される場合もあれば、不妊治療を行いながら体質や症状に応じて検討される場合もあります。
一方、排卵障害が強い場合や妊娠を希望している場合には、レトロゾールなどによる排卵誘発をはじめ、西洋医学的な治療が重要となることもあります。

漢方薬の使用を検討する場合には、「PCOSだからこの漢方」と決めるのではなく、現在の月経周期や体質、妊娠希望の有無、治療内容、併用薬などを確認したうえで選ぶことが大切です。
漢方薬の選択でお悩みの場合は、カミツレ薬局へお気軽にご相談ください。
当薬局では一般用漢方薬の通販にも対応しており、全国へ配送しております。

参考・出典


  • 公益社団法人 日本産科婦人科学会「多嚢胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について」
  • 公益社団法人 日本産科婦人科学会「本邦における多嚢胞性卵巣症候群の治療指針(2025)」
  • International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome 2023.
  • 漢方治療指針「女性特有の症状・疾患−多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」
  • Ushiroyama T, et al. Effects of unkei-to on endocrine function and ovulation in women with high basal levels of luteinizing hormone secretion. J Reprod Med. 2001.
  • Ushiroyama T, et al. Effects of switching to wen-jing-tang (unkei-to) on endocrinological status and ovulatory induction in women with polycystic ovary syndrome. Am J Chin Med. 2006.

※本記事は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)および漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としています。
PCOSは症状や程度に個人差があり、漢方薬のみで対応できるとは限りません。月経が長期間来ない場合や妊娠を希望している場合などは、必要に応じて産婦人科等で検査・治療を受け、医師・薬剤師にご相談ください。